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東京高等裁判所 昭和37年(行ナ)45号 判決 1967年9月07日

原告 大原玉之助

被告 特許庁長官

主文

昭和三十四年抗告審判第一、八四二号事件について、特許庁が昭和三十七年三月十日に審決を取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一双方の申立

原告は主文同旨の判決を求め、被告は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。

第二原告請求原因等

一  原告は昭和三十三年三月十日、「釣糸」という名称の考案について、実用新案登録の出願をしたが(同年実用新案登録願第一一、八七〇号)、昭和三十四年六月三十日拒絶査定を受けたので、同年七月三十日抗告審判を請求したところ(同年抗告審判第一、八四二号)、昭和三十七年三月十日、右抗告審判の請求は成り立たない旨の審決があり、その審決謄本は同年三月十九日原告に送達された。

二  特許庁の審決は、本願実用新案の要旨を、原告が昭和三十四年十月五日付で差出した訂正説明書の登録請求の範囲に記載された通りの釣糸の構造にあると認めたが、右の登録請求の範囲に記載されたところは次の通りである。

「ポリエステル系合成繊維を芯(1)とし、その表面をポリアミド系合成繊維を編組した繊維層(2)によつて包被し、その繊維層(2)の表面に溶剤に溶解したポリアミド系合成樹脂の溶液を塗布して繊維層(2)の表面部を溶解して塗布層と一体の表皮層(3)を形成して成る釣糸の構造」

これに対し、審決は、拒絶査定において拒絶理由として引用された特公昭二九―五、八一九号公報について、右公報には、「合成ポリアミドのような熱可塑性材料の繊糸を撚つて芯とし、ナイロンのような合成ポリアミドの繊糸により編組した繊維層をこれに被覆し、次に合成ポリアミドの溶液を塗布した絃」が記載されているとし、次いで本願実用新案とこの絃とを比較して、

「前者は芯をポリエステル系の合成繊維にしたのに対し、後者はポリアミド系の合成繊維とした点に差異あるにすぎず、その外の構造は両者ことごとく一致している。

ところでポリエステルといいポリアミドといい釣糸の芯として用いるときはさほど作用効果に差異を生ずるものと認めることはできず、結局上記の芯の構成材料の差異は単なる材料の変換に止まり、考案を構成するに至らない。」

として、本願実用新案と引用例との差異には考案が認められないから、前者は後者と類似に帰し、旧実用新案法(大正十年法律第九十七号)第三条第二号に該当し、同第一条の登録要件を具備しないものとするとの判断を示したのである。

三  しかしながら、本件審決は、次のような本願実用新案と引例の構造を正しく認識することなく、また、その差異を看過して判断した違法のものであるから、本件審決の取消を求める。

すなわち両者の間には、芯の材料が、本願のものがポリエステルであるのに対し、引例のものはポリアミドであるという差異と、本願のものにおいては芯と外皮層とが別体であるのに対し、引例のものは芯と外皮層とが固化して一体となつているという構造上の差異があり、これによつて作用効果の点においても顕著な差異がある。

先ず、本願の釣糸と引例の絃との材料および構造のちがいについてみると、本願のものは、芯にポリエステル系繊維を使用し、その外側をポリアミド系繊維を編組した繊維層をもつて包被し、その表面に溶剤に溶解したポリアミド系合成樹脂の溶液を塗布した表皮層からなり、なお、繊維層の表面部は溶剤で溶解されて表皮層と溶着して一体となるが、ポリエステル系繊維の芯はこの溶液で溶解しないから、芯と繊維層および表皮層は別体をなしている。これに対し、引例の絃は芯と編組層にナイロンすなわちポリアミド系繊維を使用し、その上に同じポリアミド系合成樹脂の溶液を塗布した表皮層からなるものであつて、しかも芯と被覆と表皮がともにポリアミドで質的に同じなので、表皮であるポリアミド溶液の溶剤により被覆層のみならず芯の繊維まで溶解されて全体が一体に固着されている。

そして、本願の目的としたところのものは主として深海にすむ魚を釣るための釣糸であり、その目的達成のために前述のような材料および構造がとられたのである。

ところで右のような用途をもつ釣糸に要求される条件としては(イ)水、海水に対する耐蝕性が大であること、(ロ)吸水性が少ないこと、(ハ)伸度の少ないこと、(ニ)適度の柔軟性を有すること、(ホ)耐摩擦性が大であること、(ヘ)引張強度が大であること、(ト)可撓性が大であること、(チ)キンクの生じないことなどが挙げられるが、このうちでも、とくに伸度の少ないことが要請される。そしてこのような要請は本願の釣糸によつてはじめて達成されたのである。

すなわち、このような釣糸には従来麻糸が用いられていたのであり、ナイロンの釣糸の出現によつて絹および木綿の釣糸はたちまちナイロンによつておきかえられたにもかかわらず、この種釣糸には伸びに性質のあるナイロンは全く適せず使えなかつたため、依然として麻糸が用いられていたのである。そして、ポリエステル系合成繊維を芯に用い、後述のような作用効果をもつ本願の釣糸が出現したことでやつとこの必要を満たし、現在では麻糸に代つて本願の釣糸が用いられているのである。

そこで、作用効果の違いについてみると、

(1)  釣糸として、魚がかかつたとき敏感に反応するために伸度の少ないことが必要であるが、本願の釣糸は引例の絃に比較して伸度が非常に少ない。

すなわち、引張伸度は二分の一以下で少ない。また、瞬間荷重時の伸びも少なく、残留伸びも小さい。さらにクリープ率も四分の一以下である。

このように、本願の釣糸は、引例の絃に比して、その材料および構造を異にする結果、右いずれの点からも、伸び率が非常に小さいという効果を挙げており、引例では解決しえなかつた伸度の少いという目的を達成している。

(2)  また釣糸のように水中で使用されるものについては、吸水性の少ないこと、湿つた状態においてその性質に変化のないことが必要であるが、吸水性の点では、本願の釣糸は引用の絃に比べて約二分の一であり、また、乾湿による変化はきわめて少ない。

(3)  そのほか、本願の釣糸は引例の絃に比して柔軟性および可撓性において優れており、また、キンク状況になりにくいため、釣糸としてきわめて扱いが容易である。すなわち、魚を釣る場合、釣糸をたぐり上げてまたすぐ海にほうりこむというような操作をするが、キンク状況になつていると外の糸までからみ合つてしまうのでたいへん操作しにくくなるのであるが、本願の釣糸は、このキンク状況になる可能性が与えられている場合でもすぐ元に戻るという性質があるのである。

(4)  なお、乾時における引張強度は本願の釣糸の方が劣つているが、湿時にも大した変化も見られないのに、引例の絃は湿時における強度低下が大きいから、湿時における両者の強度はほとんど同じであつて、水中で使用される釣糸としては実用上両者にはほとんど優劣がない。

また、耐摩耗性もほとんど差異はない。

要するに、本願の釣糸は引例の絃に比して、伸度の少ないこと、吸水性の少ないことまた乾湿時における変化がきわめて少ないことなどにおいてとくに優れ、この特徴の故に、釣糸とくに深海にすむ魚をとるための釣糸として、最大の欠点である伸びの問題を解決し、きわめて優れた釣糸を提供しているものであつて、合成繊維を材料とした深海用の釣糸を得る目的は本願の釣糸によつてはじめて達成されたのである。

被告は、本願の釣糸を引例の絃と対比し、材料の転換にすぎないと主張するが、本願の釣糸がポリエステルとポリアミドの性質の違いに着目し、芯をポリエステル系合成樹脂にすることで、はじめて前述のようなすぐれた作用効果を達成しているのであつて、例えば、これを全部ポリアミド系合成繊維にしたもの、あるいは、逆に全部ポリエステル系合成繊維にしたものでは全く本願の目的は達成されないのであつて、決してありふれた材料を単に転換したにすぎないものではない。

このことは、全部ポリアミド系合成繊維を使つた引例のような釣糸が従来の天然繊維の釣糸に代つて使われたにもかかわらずこの種釣糸としては伸びの大きいために使用できず、また反対に全部ポリエステル系合成繊維を使つた釣糸も市販されたが、結局キンク状況を生ずる欠点から商品としての価値を失つて、本願の釣糸のみが従来の麻糸に代つて使用されていることからも明らかである。

要するに、本願の釣糸と引例の絃の上述したような材料、構造および作用効果の違いに着目すれば、本願実用新案は引例と全く別異の考案であるか、少くとも引例の発明を超える考案力を要する考案である。

第三被告の答弁等

一  原告請求原因等一および二記載の事実は認めるが、その余の主張は争う。

二  本件審決の判断は正当である。

ポリエステル系合成繊維もポリアミド系合成繊維も釣糸としてみるときは、普通に用いられているものであり、この両者の性質の差異は実用上それほど顕著なものではないし、また、芯とこれと別体の被覆繊維とをそれぞれ別の材料によつて構成し、各材料の有する特性を釣糸等の漁業用に利用することも普通の技術手段である。

このように、ポリエステルもポリアミドも水産用の糸条として周知の合成樹脂製繊維材料であるばかりか、芯と外被とを異なる繊維材料を使用し、これらの繊維の有する特性を寄せ集めて利用することはきわめて普通の技術手段であるから、ポリアミド芯をポリエステル芯に転換することには考案は認められない。

のみならず、本願のものは、もともと釣糸またはガツト糸として出願されたもので、外被層と芯が別体である点についての構造の説明は必ずしも充分ではなく、またその作用効果についても、芯と外被層の材料の差異からもたらされる作用効果も、若干の説明はあつても、これを釣糸としてみるときは外被層と芯とは緊密に結合し、実用上格別の差異がないとするのが妥当である。

本願のものは、引例の絃と同様に平滑な合成樹脂表皮層を備えているため吸水性がほとんどないのであつて、芯は直接海水に接触しないのであるから、仮りにポリエステル系のものの方がポリアミド系のものより吸水性が少いとしても、その故に本願のものが釣糸としての実用上吸水性についてそれほどの効果があるとはいえないし、また、原告のいうように、本願のものの芯は編組層とは別体で、しかもその芯の材料であるポリエステル系繊維はポリアミド系繊維に比し伸度が小であることは認めうるも、釣糸として使用する場合のポリエステルとポリアミドのもたらす材料の性質の差異は実用上それほど顕著ではなく、本願のものは引例の絃と同様に芯を引き揃えているので、伸長しやすい編組繊維層ののびを防止するのであり、またこの編組繊維層により柔軟で可撓性に富みキンクを生じないのである。

しかも、引例の絃も本願のものと同様に、表皮の塗布層の溶剤は編組層の表面一部だけしか溶解していない。すなわち、引例の絃が、原告主張のように、表皮の塗布層の溶剤が編組層を浸透して芯を溶解して芯と繊維編組層とが同体となつているならば、溶剤が編組層を浸透する際にその編目層は消失してしまうことになるからである。

もつとも芯とその外層とが別体のものは本出願前より普通に知られているものであることは前記のとおりであり、仮りに引例のものが同体となつているとしても芯と外被とが別体になつているか同体になつているかの構造上の差異は、これを細長い釣糸にした場合、溶は外被に緊密に包まれ、芯と外被とが別々に屈撓移動することは不可能であるから、そのもたらす作用効果に何ら変りはない。

なお、原告の提出した甲第五号証(試験結果報告書)の試験方法は必ずしも実際に即したものではなく、この証拠をもつて、原告の本願のものに引例の絃との差異に考案性の存在を認めさせる資料とすることはできないものである。

第四証拠関係<省略>

理由

一  原告が請求原因一および二において主張した、本願実用新案に関する特許庁における手続の経過および本件審決の内容については当事者間に争いがない。

二  右の争いのない事実ならびにその成立に争いのない甲第一号証の二および甲第四号証の各記載によると、本願実用新案の要旨は、原告請求原因等第二項に記載された通りであり、また、前記争いのない事実および甲第二号証の記載によれば、本件審決が拒絶理由として挙げた昭和二十九年特許出願公告第五、八一九号公報には、ポリアミド系合成繊維(合成ポリアミド型の可塑物という表現を用いている。)の芯を中心にして同じくポリアミド系合成繊維の編物で鎧装し、これを合成ポリアミド溶液で処理して芯糸と編物と溶液層とを一化体させた絃の製造方法ならびにその製品が記載され、さらにこの絃がラケツト及び楽器用の外、魚つり用テグスおよびつり糸のような他の目的にも使用できる旨の記載があることが認められる。

三  本件審決は右両者を類似のものとし、本願実用新案の新規性を否定したものであり、原告は審決のこの判断を不当と主張するので、以下その当否について検討する。

(一)  まず本願実用新案の釣糸(前者)と引用例記載の絃(後者)とを対比して見ると、

(1)  芯糸は前者にあつてはポリエステス系合成繊維糸であるのに対し、後者のそれはポリアミド系合成繊維糸であり、

(2)  包被用編糸はともにポリアミド系合成繊維糸であつて、

(3)  塗布用溶液もまたともにポリアミド系合成繊維の溶液であるが、後者は芯糸も、またその上を編組した部分も、いずれもポリアミド系の糸から成つているため右溶液は芯糸の部分も編組した部分もともにこれを溶かし得るものであり、従つて引例のものにあつては右溶液を塗布した表層部分、中間の編組部分及び芯糸の部分が全部一体となり得る性質のものであり、現に右引例公報の特許請求範囲の項及び発明の詳細なる説明の項でも右が一体となるものであることを明かにしているに対し、本願のものにあつては右溶液は編組部分であるポリアミド系糸の部分はこれを溶かし得るが、芯糸の部分であるポリエステル系繊維の部分はこれを溶かさず、従つて、表層部分、編組部分は一体となるが、この部分と芯糸の部分とは一体とならないのである。

そして右の各点からこれを見れば、前者と後者とは(2)の包被用編糸と(3)の塗布用溶液とはこれを共通にするが(1)の芯糸の材料の点において差があり、また(3)の表層部分、編組部分と芯糸の部分が一体となつているかどうかの構造の点においてもまた差異があるものである。

(二)  そこで右差異により、本願考案と引例の絃との間に、本願は釣糸についての考案であるから、その釣糸としての作用効果の上にどんな差異があるかについて考えてみる。

証人の鈴木正夫の証言により成立を認める甲第五、六号証、前示甲第一号証の二に右証人及び証人西山茂雄の各証言を総合すれば次の事実が認められる。

「本願の釣糸を魚釣用殊に深海にすむ魚の釣糸用として使用するときは、(イ)芯糸がポリエステル系繊維であるため引例のもののようなポリアミド系繊維を芯糸とするものに比べその伸度が小さいため魚の引掛り感度がよく、その点において引例の絃に比して深海魚用の釣糸として著しくすぐれた効果を奏するとともに、芯糸の部分と表層及び編組部分とが一体となつていないため、この構造によつて、(ロ)全体が柔軟且つ屈撓性に富み、また表層及び編組部分はポリアミド系のもので伸張性があり、しかもこれが芯糸の部分とは別個に芯を包被したままで自由に伸張するため、小径の輪状にも容易に屈曲してなり得るので、糸巻枠等への捲取りが容易であり、深海より手操り寄せる場合も自然に小径の輪状となつて整然と積み重なり、周囲に不自然に拡散することがなく、魚釣操作を容易迅速に行うことができるものであつて、また平滑な表層部の滑り性と弾性とによつてキンクを生ずることもないものであり、この(ロ)の点は引用例のものにおいても大体奏し得る効果ではあるが、本願のものは芯糸の材料を前記のようなものとするとともに、芯糸部分とその外被部分との構造を前記のようにしたため、引例のものにおけると同様な(ロ)の利点を失うことなくして(イ)の利点をもまた兼ね備えしめ得たものであつて、従来深海魚用の釣糸としては麻糸製のものしか使用できなかつたものが本願釣糸の出現によつてこれに代る、しかもよりすぐれた釣糸を得ることができたものであり、引用例のものにはとうてい右のような作用と効果はこれを期待することができないものである。」

従つて、本願のものと引例のものとがその作用効果において相当の差異のあることは明らかであり、右効果のうち(イ)のものは芯糸用の材料を引例のものにおけるポリアミド系のものよりポリエステル系のものに代えたことから生ずる当然の効果ともいい得るものではあるが、この効果を(ロ)の効果とともに兼ね備えしめ得た所以は、本願のものにおける前記の構造にあり、この両効果を奏し得る点において、本願のものと引例のものとの間には、その作用効果上においても相当大きな差異があるものといわなければならない。

(三)  以上(一)(二)の点を総合すれば、本願実用新案と引例発明との間には、その材料、構造及び作用効果の点においても相当大きな差異があり、右の差異には考案の存在を認めるのを相当とするのであつて、これを単なる材料の変換にすぎないものとして両者類似とした審決の判断は失当というの外はない。

四(一)  被告は「ポリエステル系合成繊維もポリアミド系合成繊維も釣糸としてみるときは普通に用いられるものであり、この両者の性質の差異は実用上それほど顕著なものではないし、また芯とこれと別体の被覆繊維とをそれぞれ別の材料によつて構成し各材料の有する特性を釣糸等の漁業用に利用することも普通の技術手段である」旨主張し、その立証として乙第一号証から第四号証までを提出している。しかし右被告主張の両繊維が釣糸として普通に用いられるものであるとしても、これを本願のような構成とし、それに前記のような作用効果があるものとすれば、右両繊維が釣糸として普通に使用せられるというだけの理由で本願の考案性を否定することはできないことである。そしてまた成立に争いのない乙第三、四号証によれば、芯と外被とを別の材料で構成した漁業用の綱が本願前からあることはこれを認めるに足るのであるが、乙第三号証のものは「真珠養殖用容具籠垂吊芯入綱」に関するものであり、同第四号証のものは「漁業用沈子綱」に関するものであつて、いずれも漁業用とはいつても、各右記載のような特殊の用途に使用するためのものであつて、本件のような釣糸用のものとは全く利用範囲を異にするものであるから、本願のものの考案性を否定すべき資料としてはこれを不適当というの外はなく、また乙第一、二号証のものは芯と外被とを一体化するものであること本件の引用例のものと同様なものと解すべきであるから、これまた右同様不適当なものである。

(二)  被告はまた引例の絃も本願のものと同様に、表皮の塗布層の溶剤は編組層の表面一部だけしか溶解していない旨主張するが、その然らざることは前に記載のとおり、その明細書である甲第二号証の記載自体から明らかである。

(三)  また被告は甲第五号証(試験結果報告書)の試験方法は必ずしも実際に則したものではなく、本件の資料とすることは不適当である趣旨の主張をする。しかし右記載の試験方法は繊維又は糸の試験方法として妥当なものであり、この試験結果を実際の使用上における釣糸の性能を知るための参考とすることには何らの支障もないものと考えられる。

五  以上のとおりであるから、本願実用新案が引用例のものに類似するとしてその新規性を否定した本件審決は失当であり、その取消を求める原告の本訴請求は相当である。よつて右審決を取消すこととし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 山下朝一 古原勇雄 田倉整)

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